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経理マンのためのIFRS情報局

IFRS導入プロジェクトに携わる公認会計士が、これまでの経験や新聞記事を基に情報発信

12. 減損損失に関する基準間の考え方の差異

「減損」と聞いて、どのようなイメージを抱くでしょうか?

日本企業の方は「投資の失敗」をイメージし、経営責任にも繋がりうる一大事と捉えるかもしれません。

 

一方、IFRSにおける金融資産以外の減損損失に関する基準であるIAS第36号では、そこまで大げさなものではなく、むしろ経常的に発生するものと捉えられています。

 

こうした両者の認識差が表れているのが以下の2つの基準差異です。

1. 減損認識までの2ステップアプローチ vs 1ステップアプローチ

2. 減損の戻入れの有無

 

1.について

日本基準は減損の兆候有りと判定された場合、割引前キャッシュフローと帳簿価額を比較することで、減損の確実性を担保します。割り引く前のキャッシュフローでも帳簿価額を下回るくらいだから減損の発生も確実性が高いだろうという発想です。

一方、IFRSは兆候があれば即座に測定プロセスに入り、割引前キャッシュフローと帳簿価額を比較する手間をとりません。

これは言ってみれば、IFRSがそれだけ減損を気軽に計上するものと捉えているためです。

 

2.について

2についても然りです。日本基準は、確実性を期して計上した減損損失について、戻し入れを認めていません。そのため、日本基準を適用している会社にとっては、減損損失の認識は深刻で取り返しのつかないものという認識がもたれているのだと思います。

一方、IFRSでは(のれん等の一部資産を除いて)戻し入れを認めています。減損損失の認識と同様に、「減損がなくなっている兆候」があれば、戻し入れを認識・測定します。これもまた、IFRSが減損を気軽に捉えている証拠と理解しています。

 

 

過去に「IFRSは全面時価会計だ」という誤解がまかり通っていた時期もありました。*1

これは極論過ぎて私もいかがなものかと思いますが、減損会計については多少は的を射ているようにも思えます。というのも、IFRSでは固定資産を「価値が下がったら減損、価値が戻れば戻し入れ」といった具合に、価値の増減を示す事象が生じることに応じて、まめに公正価値測定しているとも捉えられるためです。

そのため、日本基準とは大きな感覚の違いがあるように思えます。こうした意識の差が埋まらず、減損はとても悪いものだという日本基準の発想の名残により、IFRSに移行しても減損の認識が遅延する傾向がないでしょうか。IFRSにおける減損は、ちょこちょこと経常的に発生し、なくなったら戻し入れればよいものです。日本人にとって「減損」はあまりにもマイナスイメージが強いので、もしかしたら語感としては評価損という方がしっくりくるのかもしれません(英語ではimpairmentです)。

 

減損は、日本だけでなく欧州も含めた各国で様々な側面から問題視されており、欧州規制当局のESMAも過去に何度かレポートを提出しています。そのあたりも、追々ご紹介します。

*1:各企業の有報の「重要な会計方針」を見ても分かるように、IFRSでも貸借対照表計上額は基本的には原価ベースの金額です