経理マンのためのIFRS情報局

IFRS導入プロジェクトに携わる公認会計士が、これまでの経験や新聞記事を基に情報発信

10. 未実現利益の税効果

税効果会計は何かと分かりづらい論点が多く、実務でもつまずく事が多い分野です。

 

その中から、今日は未実現利益の税効果について説明します。この会計処理は日本基準とIFRSとの間で差異が生じており、かつASBJが日本基準の改訂も検討している論点なので今回取り上げます。なお、日本での会計処理の見直しは米国会計基準での改正(棚卸資産以外の資産は資産負債法、棚卸資産は繰延法)を契機としています。

 

まず基本の整理です。税効果会計には以下の2つの考え方があります(簡略化した説明です)。

①資産負債法  

会計上の資産または負債と、税務上の資産または負債との間の差異に対して繰延税金を計上する方法

②繰延法

会計上の収益または費用と、税務上の益金または損金との間の差異に対して繰延税金を計上する方法

 

日本基準もIFRSもベースは資産負債法です。これは、PLに計上されないものの税金支払に影響する「その他の包括利益」項目があることも背景です(日本基準でいうと、その他有価証券評価差額金)。

例外が未実現利益の税効果で、日本基準は繰延法、IFRSは資産負債法の考えに基づいています。

 

で、何が違ってくるのか?という点が重要です。

 

以下の前提を置きます。

  • 親会社が子会社に、取得原価80の製品を100で売った = 未実現利益は20
  • 親会社の税率30%、子会社の税率40%
  • 繰延税金資産の回収可能性はある前提
  • 連結修正仕訳は以下の通り

   売上高 100   /    売上原価  100

   売上原価  20   /    棚卸資産  20

 

①資産負債法の場合

資産の帰属先を重視します。

このケースでは、棚卸資産は子会社のものとなっています。

その観点で見ると、子会社にとって、会計上の棚卸資産は購入価格から未実現利益を控除した80です。一方、税務上の簿価は購入価格である100なので、将来減算一時差異が生じています。

そして、この税務上の影響は子会社に帰属すると捉えるのが資産負債法の特徴で、以下の2点に留意が必要です。

  • 未実現利益に係る税効果は子会社の税率で計上

   繰延税金資産  8   /  繰延税金(PL)   8

  • 上記の繰延税金資産の回収可能性は子会社の課税利益をベースに判定

 

②繰延法の場合

繰延法ではPLの帰属で見ます。このケースでは売上原価に会計と税務の差異が生じていますが、売上原価は親会社に帰属します。そのため、

  • 未実現利益に係る税効果は親会社の税率で計上

  繰延税金資産  6  /  繰延税金(PL)   6

  • 上記の繰延税金資産の回収可能性は親会社の課税利益をベースに判定

 

ということで、いずれの考え方を取るかによって、BSやPLへの影響が変わってきます。

 

その他の留意点

  • 日本基準からの移行にあたって、どのように未実現利益に係る繰延税金資産の回収可能性を売却先で判定するのかという点がしばしば懸念されるのですが、少なくとも私の経験上は実際に移行の段階になって、実務上で問題になったことはありません。通常用いている繰延税金資産の回収可能性検討フォームのなかに未実現利益の項目を追加すれば足りるという認識です(その他、IFRSにおける繰延税金資産の回収可能性に関しては改めて記事にしたいと思っています)。
  • 私見ですが、IFRSで資産負債法を採用していることは、ほかのいろいろな面とも整合します。例えば、為替換算です。のれんもそうですが、連結手続上で生じた資産・負債については、帰属先の子会社の資産・負債だという前提の下で換算します(つまり、ドルが機能通貨の子会社を取得したときに生じたのれんについては、のれんをドルベースで捉え、親会社の表示通貨が円であれば毎期末時点の為替レートで円換算することになります)。資産負債法でも棚卸資産の帰属先の税率・回収可能性で税効果会計を適用することは、他の基準とも整合しているのではないかという風に思っています。