経理マンのためのIFRS情報局

IFRS導入プロジェクトに携わる公認会計士が、これまでの経験や新聞記事を基に情報発信

5. IFRSにおける減価償却方法について

日本基準ではご存知の通り、減価償却方法は定率法を採用する会社がほとんどです。

これは、日本基準においては減価償却方法が会計方針の選択と捉えられていることにも起因しています。ある意味任意で定率法を選択でき、税務メリットがあるので多くの日本企業で定率法が採用されています。

 

一方、IFRSでは定額法が標準仕様、ほぼデフォルトです。これは日本の任意適用企業だけでなく、海外の企業でも同様なのである意味定額法がグローバルスタンダードです。

IFRSでは減価償却方法は、会計上の見積りと捉えられており、経済的便益の費消パターンを反映する方法を採用しなければなりません。この見積りを行う時には、以下に示す耐用年数の決定時の考慮事項を加味します。

  • 資産の予想される使用量
  • 予想される物理的な自然減耗
  • 技術的、又は経済的な陳腐化
  • 法律等による制約

これだけ見るとピンときませんが、何年使えるかを検討する際には「どのように減っていくか」も同時に考えているはずだということです。帳簿価額を縦軸、年数を横軸にとって帳簿価額の減価を追う場合、Y切片から始まりX切片(=耐用年数)に到達する線を引くことになります。このときの線こそが減価償却方法を表します。

 

さて、日本基準で定率法を採用したままIFRSに移行する場合、減価償却方法についても原則に従って取得時まで遡及修正することが求められます。大変です。もちろん頑張って遡及することもできるでしょうが、他の対応方法として2つ考えられます。

1. 日本基準で早めに定額法に変更しておく

2. IFRS第1号のみなし原価の免除規定を使う

 

1.は、日本基準でIFRS移行日よりも前に定額法に変更しておくことで、移行日時点における遡求修正の影響を軽減する方法です。実際に多くの任意適用企業がこの方法を採用していますし、しばしば「日本基準で定額法に変更した企業はIFRS任意適用を視野に入れている」と言われることもあります。

また、移行日よりも前に、というのがポイントで早ければ早いほど影響を軽減できます。なぜなら、日本基準では減価償却方法の変更は、(会計方針の変更であるにもかかわらず)遡求修正されません。そのため、日本基準上で移行日直前に減価償却方法を変更したところで、IFRSに従って遡求修正した場合とは大きな差が生じる可能性が高いためです。そのため、極力移行日よりも前に日本基準で定額法に変更しておくことで、移行日に遡求修正した場合の影響を軽減できるのです。あとは重要性でさばけるかどうかということになります。

なお、日本基準で会計方針を変更するのもなかなかハードルが高いかもしれませんが、そこは担当の会計士にご相談ください。

 

2.のみなし原価については、IFRS1号の遡及免除について書くときに詳細は説明したいのですが、ざっくりいうと移行日時点の公正価値で測定する方法です。公正価値の測定自体が大変なので、あまり免除規定になっていない感もあるのですが、「つまみ食い」ができたりと案外使い勝手は良いです。そのあたりもまた改めて。

 

いずれにせよ、定額法がグローバルにも一般的ですし、日本の任意適用企業でも(一部の資産を除いて)定額法がほぼすべての資産に適用されています。減価の態様が定率法だということも不可能ではないのかもしれませんが、比較可能性の観点からは定額法にしておくことが無難です。また、先例がないので会社としても説明しがたく、また監査人も受け入れがたいように思えます。

そのため、とりわけ有形固定資産が重要性を有するような企業においては、早めに日本基準においても定額法に変更しておく(もしくは移行日に備えて定額法に修正した金額を出せるようにしておく)ことが必要となってくると考えられます。