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経理マンのためのIFRS情報局

IFRS導入プロジェクトに携わる公認会計士が、これまでの経験や新聞記事を基に情報発信

3. 楽天の2016年度3Q決算に関する記事

今日の日経に楽天の株価が下落している記事があり、そこに「ポイントは販促費に計上するため、利益を押し下げる」とありました。

 

IFRSに携わっていると「おや?」と思います。

 

なぜなら楽天IFRS適用企業なのですが、IFRSにおけるポイントプログラムの処理は日本基準とは異なるためです。

 

もう少し説明します。

楽天IFRSの任意適用企業であり、かつ、IFRS第15号という新しい収益認識基準を早期適用している唯一の日本企業です(2016年11月12日現在)。

ポイントを付与した場合、現行の基準であるIFRIC第13号と新基準のIFRS第15号では会計処理が大きく異なることはなく、基本的に売上から控除します。

簡単な例をおきます。

  • 製品を販売したときに、売価に対して1%のポイントを付与する小売店がある
  • 客は1ポイント=1円の値引きを将来製品を買うときに享受する
  • ポイントを使う確率は50%とする。
  • 小売店は100,000円の製品を販売した(現金で決済したとする)

すごく単純な例ですが、この場合には以下のような仕訳になります。

 現預金 100,000円 / 売上 99,500円

            繰延収益 500円(100,000円×1%×50%)

この繰延収益は、将来ポイントが行使されるときに売上に振り替えられます。

 

ここで冒頭の記事の記載に戻りますが、「ポイントは販促費に計上するため」とあります。

IFRSに携わる者としては「いやいや、日本基準じゃないんだから」と思ってしまいます。日本基準では、上記の例について以下の仕訳になるためです。

 現預金 100,000円 / 売上 100,000円

 引当金繰入額(販促費)500円 / ポイント引当金 500円

 

では、この日経の記事は間違っているのでしょうか。

しかし、楽天の2015年度の有報などを見てみると、誤りと考えるのは少し早とちりのようです。どうやらポイントには以下の2つがあるようです

  1. 製品売上時に付与されるポイント
  2. 新規入会時に付与されるポイント

ここまで説明してきたのは、1.のポイントです。こちらについては楽天も売上から控除しているのは有報等の記載からも分かります。

 

今回記事になった「販促費計上されて利益を圧迫しているポイント」は2の方だと私は理解しました。よくCMでもやっている「楽天カードに入会すると〇〇ポイント付与」というあれですね。

こうした新規入会ポイントについて昨年度の有報にも記載があり、新規入会者に付与するポイントは、「契約獲得コスト」として会計処理しているとのことです。

この「契約獲得コスト」はIFRS第15号になって導入された考え方ですが、契約獲得に係る増分コストを資産計上するものです。資産計上されたコストは、収益の計上に応じて費用処理されます。

つまり、ポイントの中でも新規会員の獲得のために付与するポイントについては、収益から控除するのではなく、資産計上したうえで一定期間にわたって費用処理するということです。

そうすると、この「費用処理」が「販管費」を経由することを意味しているのであれば、冒頭の記事は「新規入会のために付与するポイントが増加したことで当期に償却される費用=販促費が増加したために利益を圧迫した」と読み替えることができます。ただ、新規入会ポイントでそんなに利益が圧迫されているのかなあ、というのも少し疑問は残りますが…

 

いずれにせよ、IFRSでも必ずしも「ポイントの付与=収益から控除」ではないということを考えさせられました。